(創作。中学入学頃から、異性愛者だと信じて官能小説を書いてきたが、少年愛なら具体的性描写がなくても心満たされることに気づきはじめた)
遺留品 : 砂井少年15歳の手記
〜しきゅうにん〜(※1)抄
少年はネクタイからセビロ、ズボン、靴にいたるまで、すべて黒ばりの、黒ずくめのかっこうであったが、そのために一層、白いシャツと肌がたまらなく清純な光を放っていた。しかしそれはどこか妖しく、恐しく、激しくもあった。長い捷毛(※睫毛)と眉も、艶っぽく、それでいてすきとおるような美しさをただよわせていた。カッコウのいい鼻と、イチゴみたいな唇は「あたしをたべて」といわぬばかりであった。シングルカットだが、ととのっているのは左側の半分だけで、後髪は炎のようにゆらめき、右側の髪は水木しげるの「草」(※2)のようにグシャグシャであるが、不思議と神秘的なものだ。前髪は横分けなのだがうしろはなんとなくまんなかからわかれている。そしてそのわけめは、やがて首となり、やがて白く美しいうなじになってステキにうごめくのだ。![]() 「猿山さん(※3)、ムーンキャッスル(※4)に入るんだって?」 「ああ。」 「わーい。これでいつもあえるねっ」 「まぁね。」 (※中略) 「僕は猿山…猿山正。もしよろしければおちかずきになりたく存じます。」 「イイヨ。僕は砂井藍緑(※5)。プラトニックで、ステキな恋ならぜひよろこんで。」 (成立時期:中学3年1月12〜31日) |
注記 :
※1使給人)使用人と給仕人とが混同されたもの。不正確な言葉だが、何か特別な意味で追従する少年の自分、というイメージのみを正確に表現したい作者の気持ちが感じられる。
※2草)『水木しげる貸本モダンホラー 上』(太田出版,1998.11)所収。他のたとえはなかったのか?
※3猿山)さるやま。架空の少年愛者像。成人男性。(上図右側)
※4ムーンキャッスル)「紫葎(しりつ)ムーンキャッスル楽園(がくえん)」は、17歳の回想記によれば
自嘲的かつ希望的な行きたい学校図、というかぼくの居場所図である。 (成立時期:高校2年6月30日) |
※5藍緑)__らんろく。理想的自己像。原典では本姓表記。詳細は《開花篇》「初藍緑」参照。
(少年愛を注がれる少年側に立脚した情趣を、明確に表した創作であった。)
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